タンガニイカ渡航記2025

今年度もはるばるタンガニイカ湖まで調査に行ってきました。

2022年から数えて4度目の渡航となりますが、今回は魚類学会の翌日の11月25日に関空発、12月21日に羽田着、調査地ムプルングへの滞在期間は11月29日~12月15日となり、実質的な調査期間は2週間でした。やはり移動が大変ですね。 

研究テーマは昨年に引き続き「顔の模様の個体差」でした。昨年は協同繁殖種のN. pulcherを対象にデータを集めましたが(今年の魚類学会で発表しました)、今年度は同じく協同繁殖のN. savoryiのほか、一夫一妻のN. caudopunctatus、一夫多妻のN. tetracanthusなど調査しました。

写真の中央にテトラカンサスのオスが1匹写っている。
対象種のひとつN. tetracanthus
全長10 cmを越えるNeolamprologus属では最大級のシクリッドです。
N. caudopunctatusのペアが砂底にいる。よく見ると石の隙間に稚魚がいて、子育てをしているのがわかる。
N. caudopunctatusのペア。砂底の石の隙間に穴を掘って子育てします。
全長5 cm程度ですが、N. tetracanthusのような大きな相手にも果敢に攻撃します。

データ解析はこれからですが、様々な社会システム、繁殖生態をもつ魚種を比較することで、最終的には模様の個体差などの進化プロセスを明らかにしたいと考えています。

また、今回は新たな試みとして魚を調査隊邸宅に持ち帰り、そこで水槽実験を行いました。わざわざタンガニイカ湖に来てまで室内実験なんて勿体ないようにも思いますが、実験に必要な魚をすぐに獲ってこれるというのは非常に魅力的な環境です。特に今回は繁殖ペアを使って行いたい実験だったので、そのアドバンテージを強く感じました。

バルコニータイプの廊下の突き当りに水槽が3つ並べられている。
調査隊邸宅の廊下。突き当りに水槽を並べて実験しました。
当地の上道水は湖水をポンプアップしただけのもので、ゆえに水替えも楽チンです。

ちなみに、今年の調査地はKumbula島(Mbita島)Mutondwe島(Crocodile島)の2地点でした。Kumbulaは無人島で、我々のほかには刺網や引網をする漁師がやってくる程度ですが、Mutondweはチコンデという集落があり、ダイビングの合間に休憩していると子供がぞろぞろやってきます。ザンビアの学校は1月はじまりで12月は長期休暇で、暇を持て余した子供にとって我々は格好の見世物です。

タンガニイカ湖畔の風景。波打ち際にダイビングバッグなど器材が並べられている。
Kumbula島で撤収を待つ様子。
夕方になると漁師も帰ってしまいとても静かです。
笑顔の子供たちが映る写真
チコンデの子供たち。
崖際の狭いスペースにこの人数がやってくるので賑やかです。

ムプルングへの滞在自体は2週間と非常に短いものでしたが、雨季にもかかわらず天候に恵まれて、渡航前の計画以上に調査を進めることができました。また、琉球大学の守田先生や大阪公立大学・京都大学の学生さんなどの調査隊メンバーとシクリッドの生態や研究について日夜語り合うことができ、今年も非常に充実した生活となりました。

屋内でのパーティーの様子。テーブルに食材が乗っており、手前側に日本人チーム、奥側に現地のワーカーが座っている。
調査を終えて帰国前のパーティ。
奥に座っているのは船長や見張り役などの現地ワーカーの方々。

最後になりますが、今回の渡航においてもザンビア共和国水産局およびタンガニイカ湖調査ユニット(LTRU)の方々には調査のほか、滞在許可証の申請やサンプルの輸出許可など、様々な面でご支援いただきました。ありがとうございました。

 おまけ:渡航中に撮影した写真

写真にはVariabilichromis mooriiの成魚と飲み物の空きボトルが映っている。空きボトルの口からカナダモが生えていて、稚魚が数匹口のあたりに漂っている。
子育て中のVariabilichromis moorii。水中に捨てられたボトルを巣の代わりにしています。ボトルの口のまわりに稚魚がいるのが見えるでしょうか?
ライスとチニョンゲ、野菜炒めが同じ皿に盛られている。
日々の夕食。ライスとチニョンゲスープ、野菜炒め。チニョンゲは魚の燻製(おもにLates stappersii、現地名はブカブカ)で、これをピーナッツ粉やトマトなどと煮込んでスープにします。姫かつおのような食感と濃厚なダシの風味がして日本人好みの味付けとなっており、たいへん美味です。
木でできたジルティラピアの置物が映っている。
ジルティラピアの木製の置物。ルサカで購入。ザンビアのお土産屋さんで売られている置物の大半はゾウやカバなどの陸上動物が占めており、残念ながら魚のグッズはほとんどありません。ジルティラピアはタンガニイカ湖にはいない魚ですが、出来の良さもあって思わず購入してしまいました。